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膝関節痛・変形性膝関節症

膝関節痛とは

膝の関節は全身の体重を支える重要な役割を果たしているため、常に大きな負担がかかっています。
このため、膝は痛みを起こしやすい部位とされています。

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)から成り立っており、全身の体重を支えるため、日常的に強い衝撃や負荷を受けています。
この負荷を軽減するために、骨の表面は「関節軟骨」で覆われ、骨同士が直接接触しないようにクッションとして機能しています。
また、膝関節内にある半月板は、骨への衝撃を和らげ、膝の動きを円滑にするために重要な役割を担っています。

膝の痛みの主な原因は「変形性膝関節症」です。これは膝関節軟骨の摩耗、膝周りの筋力低下、さらに「肥満」や「O脚」、運動不足などが影響し、関節軟骨や半月板の損傷を引き起こすことで発症します。

変形性膝関節症とは

症状

主な症状は動いた時の膝の痛みです。(基本的には動いていない時には痛みがなく、歩いた時だけ痛い病気ですが、悪くなると安静時の痛みも伴います) 歩行や起立動作、しゃがみ込み、正座、階段昇降などの日常生活に支障が出て、生活の質が下がる病気です。
初期では立ち上がり、歩きはじめ(starting pain)など動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれます。
中期なると正座や階段の昇降が困難となり、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。

原因と病態

原因は関節軟骨の経年的な劣化により弾性を失い軟骨がすり減り、骨が変形してきます。
ほとんどの方(90%)が内側に病変があります。 圧倒的に女性に多く、加齢とともに増加します。
40歳代で出現傾向を認め、60歳代では50%前後、70歳以上では70%に達します。 歩行時に膝にかかる負担は体重の3倍に及ぶと報告されており、肥満、生活習慣(重たいものをもったり、正座の習慣など)などでも悪化します。
O脚も関与しています。O脚になるとより内側に負担がかかるようになり、変形が進行するという悪循環に陥ります。
また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することがあります。

診断

診察で膝の内側の圧痛(関節の内側の隙間~大腿骨の内側にかけて)がみられます。
関節の動きの範囲が徐々に悪くなります。(進行すると、膝の曲がりと伸びが悪くなります)
関節の腫れがみられます。(穿刺をすると黄色で透明ですが、時に関節軟骨の破片が浮遊しています)
時に膝の不安定性、横振れ(グラグラ)が認められ、この場合は内側の負担が増加し膝痛も出やすくなります。
X線(レントゲン)検査で診断します。 立った状態で撮影する(ローゼンバーグ撮影)の正面の画像が重要で関節軟骨のすり減りを鋭敏に表します。
X線ではKellgren-Lowrence分類(grade1~4)で評価します。 MRI検査を行う場合もあります。

変形性膝関節症の予防と治療

予防(日常生活での注意点)
  1. ふとももの前(大腿四頭筋)や股関節周囲(中殿筋や内転筋)の筋肉を鍛える。
  2. 正座や床の生活をさけ、なるべく椅子とテーブルの生活をする
  3. 肥満であれば減量する。
治療
  1. 痛み止めの内服薬を適切に使用します。

    痛み止めには、①痛い時のみ内服する(頓服)痛み止め(一般的な痛み止めでNSAIDSといいます)や②慢性的に痛い時(3か月以上痛い時は慢性疼痛という診断となります)に有効な痛み止めがあります。慢性的に痛い場合は、整形外科学会の推奨するガイドラインに沿った薬を継続して内服すると痛みが軽減し生活しやすくなる事が期待できます。痛みが軽減した際は中止する事も十分可能です
  2. 外用薬(通常の湿布に加えて、痛み止めの成分が入った強い湿布もあります)
  3. 膝関節内にヒアルロン酸の注射などをします。(炎症を鎮静化させて将来的な軟骨のすり減りを抑える効果が期待できます)特に、初期の変形性膝関節症には効果を発揮します。
  4. 大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練などのリハビリテーションを行うことで痛みが軽減し、階段昇降もしやすくなる事が期待できます。 ご自身で運動する場合は、水中での歩行やエアロバイクが特
    にお勧めです。
  5. 足底板や膝装具を作成することもあります。(足底板はO脚を矯正し、装具は膝のグラグラを改善し安定を図ります)
  6. 再生医療(自由診療となります) ご自身の血液を遠心分離にかけて血小板由来の成長因子を抽出し、それを後日、関節に注射することで炎症と痛みが減ることが期待できます。 今まで述べた保存的治療(手術をしない)で効果がみられない方で、どうしても手術をしたくない方には有効な手段です。初期の変形性関節症の方が効果が高いと報告されています。
  7. このような治療でも治らない場合は手術治療も検討します。
高位脛骨骨切り術

内側もしくは外側の片側だけが悪い(重度の変形性関節症ではない)方に行います。
骨を切って変形を矯正し関節を温存するため、比較的若くて(40代~60代)、 スポーツ(テニスやランニング、登山などの激しいスポーツ)や重労働をする方に行います

人工膝関節置換術

単顆型(内側もしくは外側のどちらか)と両顆型があります。
両顆型は内側や外側(両側)、膝蓋骨の関節などの変形が強い方に行います。
正座やしゃがみ込み、激しい運動(ランニングやテニスなど)は出来ませんが、日常生活は制限なく送って頂けます。