ハイドロリリースとは
ハイドロリリースとは、エコー下で患部を確認しながら、筋膜の間を通る神経周囲に薬液や水分を注入することで、癒着した神経を剥がして神経に滑走性*を作る治療です。これにより、痛みの緩和が見込まれます。
*滑走性: スムーズな動き
筋膜とは
筋膜は、「身体全体のボディスーツ」と例えられるように、全身に張り巡らされている膜です。
また骨、1つ1つの筋繊維、神経、血管などを連結させたりする役割があります。
筋膜の役割
正しい姿勢を保つ
筋膜は関節や筋肉だけでなく身体全体をカバーしています。
この筋膜の張力により、人間は前後左右の動きなど、難しい動きにも対応できるようになっています。
力を伝える
筋膜が全身に張り巡らされていることにより、筋肉や腱の力を周囲の筋肉や腱に伝えられるため、なめらかな動きができるようになります。
感覚を伝える
筋膜には脳に感覚を伝達する神経が多く存在しており、皮膚に感じた触感、かゆみ、熱さ、冷たさ、痛みなどの情報が筋膜から脳に伝達されます。
痛みやトラブルを引き起こす
筋膜の状態
長時間にわたって同じ姿勢または悪い姿勢で過ごすと、筋膜が緊張するため周辺の組織との癒着やしこりができ、筋膜から感覚や力の伝達ができなくなります。それだけでなく、筋膜の血流が悪くなり、柔軟性・筋力・可動域の低下、痛みが起こります。
また、偏った動作を繰り返すと、筋膜は身体の方向に合わせるように動きますので、筋膜の伸縮がバランスよく行えなくなってしまいます。
その結果、筋膜が緊張し縮み過ぎると、筋膜の水分量が低下し、なめらかな動きができなくなるため、痛みが発生します。
神経の癒着が原因となる
トラブル
従来の超音波機器(エコー)では微細な末梢神経を確認することができませんでしたが、最近では高精度な機器が開発され、リアルタイムで観察できるようになりました。それにより、末梢神経に血行不良や癒着が起こると、末梢神経が牽引されて可動性が悪化し、痛みが発生することが判明しました。
こうした状態の神経の周りにハイドロリリースを実施することで、神経の可動性が改善されるため、痛みが緩和します。
ハイドロリリースの治療効果
神経周囲の結合組織を引き剥がすことにより、神経の可動性が改善するため、痺れや痛みなどの症状を緩和することが可能です。
また、可動性が改善することにより筋膜自体の柔軟性も元に戻ります。
ハイドロリリースとストレッチの違い
ストレッチもハイドロリリースと同様に筋膜の収縮を緩和することができますが、その効果は単一方向にのみ現れます。
一方、ハイドロリリースは、超音波を使用して患部を確認しながら行うため、3次元的に癒着を解消することができ、ストレッチよりも高い効果が望めます。
ハイドロリリースの特徴
超音波(エコー下)で患部の状態を確認しながら、癒着した神経の周囲に正確に薬液を注射し、癒着を解消します。
薬液は生理食塩水が主成分であり、麻酔薬や鎮痛剤の量はわずかです。
そのため、これまで行われてきた麻酔薬などを使用した注射療法よりも安全な治療となっています。
治療後の注意点
動作の癖や生活習慣などによって起こった痛みは、ハイドロリリースを行って症状が治まった後も、同じことを繰り返していると再度症状が現れます。
当院では再発防止を視野に入れた治療後のアフターケアにも注力しており、ハイドロリリースに加え、運動療法やリハビリも行っています。
その際、生活習慣や動作に関して注意すべきこと、セルフケアについても丁寧に説明させていただきます。
よくある質問
注射はやっぱり痛いですか?
痛みを極力抑えるために、針はとても細いものを使用しています。
針が刺さった時、薬液が体内に入った時に若干痛みますが、採血などに比べると痛みは少ないです。
治療効果はどのくらいで感じられますか?
多くの方が治療後すぐに効果を感じられますが、人によって異なります。
ハイドロリリースは何回受ける必要がありますか?
患者様の状態に応じて治療回数は変わりますので、当院までお気軽にご相談ください。
なお、治療効果が現れるまで複数回行う方もいらっしゃいますが、1回で効果を実感して終了される方もいらっしゃいます。
治療は保険が適用されますか?
基本的に健康保険が適用されますが、治療回数や部位は保険適用の限度が設定されておりますので、お気軽にご相談ください。