足の痛み~代表的な疾患~
外反母趾
症状
外反母趾は母趾が外反・回内する変形で第1中足骨の内側への突出や母趾の機能不全により様々な障害を生じます。
母趾の機能不全により第2.3中足骨頸部に負担がかかり足底に胼胝(たこ)が出来る場合があります。
原因と病態
10:1の割合で女性に多い病気です。
発症する要因としてハイヒールなどの靴の影響が大きく、扁平足が原因となる場合があります。母趾のMP関節の痛みが一般的で骨頭が内側に突出して靴により圧迫され有痛性のバニオンを生じます。
母趾の背内側趾神経の絞扼が激痛の原因になっていることが多くみられます。
母趾以外の槌趾変形や内反小趾による疼痛も合併しやすくなります。
診断
X線評価が基本となります。第1基節骨軸と第1中足骨軸のなす角である外反母趾角で評価します。
外反母趾角が20度~30度未満が軽症、30~40度未満が中等症、40度以上を重症とします。
ただし、X線による重症度は疼痛の程度と相関しない場合があります。(変形が強くても痛みが軽い場合があります)
治療
靴の指導は重要です。足趾が動かせるように広いトウボックス(靴の先端部分)があり、足が靴の中で前に滑らないように紐やストラップのついた靴を使用します。
ストレッチや足趾のじゃんけん体操を行います。
装具も有効ですが、変形の矯正には大きな効果は期待できません。
足底板(インソール)も有効です。(健康保険で作成できますのでご相談ください)
手術療法
疼痛があり保存治療が無効の際は手術を行います。
病態に応じて術式を選択します。母趾のMP関節の変形が強い場合は関節固定術や関節形成術を行います。
関節症変化が少ない場合は第1中足骨の骨切り術を行います。
扁平足
症状
内果の下の後脛骨筋に沿う腫脹と疼痛があります。扁平足が進行して踵が外反すると外果との間で軟部組織が挟み込まれ足の外側も痛くなります。
原因と病態
足の縦アーチを保持する後脛骨筋が変性すると後天的な扁平足を生じます。
後脛骨筋の機能不全が原因である事が多く、中年以降の女性に多くみられます。
初期では徒手的に矯正が可能ですが、次第に関節拘縮を伴って硬直性の扁平足となります。
両足をそろえて立って、後方からみると外反扁平足のため、健側よりも多くの足趾がみえます。(too many toes サイン)
診断
X線にてアーチの低下を評価します。後脛骨筋の変性や断裂はエコーやMRIによる評価を行います。
治療
アーチサポート付きの足底板(インソール)を使用します。(健康保険を使用できますのでご相談ください)
アキレス腱のストレッチや後脛骨筋や内在筋を強化する運動を指導します。
変形や関節拘縮が強い場合は、手術をする場合があります。
足底腱膜炎
症状
40歳~60歳の女性に多くみられます。
朝、起床時の一歩目で痛みがあり、歩行とともに痛みは軽減しますが、長時間の歩行や運動にて増悪します。
足関節や足趾を背屈すると足底筋膜が緊張し痛みが誘発される場合があります。
病態
足底筋膜は踵骨と基節骨を結ぶ強靭な腱膜(内側、中央、外側がありますが主に中央の障害です)で、年齢とともに変性します(傷む)。
その踵骨付着部に繰り返し、大きなけん引力と荷重による圧迫力が加わる事で発症します。
診断
足底筋膜の踵骨付着部に圧痛を認めます。
X線にて踵骨付着部に骨棘(骨のトゲ)がみられます。
エコーでは踵骨付着部の足底筋膜の肥厚がみられます(4mm以上)
踵の底側の脂肪体萎縮症が鑑別に上がりますが(圧痛の部位が違います)、合併することもあります。
治療
足底筋膜のストレッチが有効です。
アキレス腱と足底筋膜はつながっており、アキレス腱のストレッチも併用しましょう。
足底板(インソール)は荷重時の足底腱膜にかかる負荷を軽減させて症状を緩和する効果があります。
立ち仕事やスポーツ活動の多い方にはお勧めします。
足底 筋膜にステロイドを注射する場合があります(ただし複数回行うと足底筋膜が損傷する可能性があります)
対外衝撃波を用いたリハビリも有効です。(機序は照射部位の神経終末を壊す事で、成長因子を分泌させて、損傷した部分を修復すると言われています)
以上の治療で効果がみられない場合は、足底筋膜を部分切離する手術をする場合があります。その際は専門医へご紹介いたします。
モートン病
症状
足の第3・4趾の間や2・3趾の間に痛みやしびれが生じる疾患です。足底側の痛みだけでなく足趾への放散痛が出る場合があります。
思春期にもみられますが、中年の女性に圧倒的に多くみられます。
病態
前足部に繰り返し力のかかる運動やヒールの高い靴を履くことで、足趾の神経が中足骨頭、深横中足靭帯、足底筋膜、滑液包の間で絞扼されて、神経の線維化、萎縮を起こします。
ヒールを履くことは、足趾を背屈させて中足頭部の圧迫を助長することになるからです。
第3・4趾の趾神経は他の部位よりも太く、可動性が少ないため刺激を受けやすいと言われています。外反母趾や開張足はこの疾患との関連性が指摘されています。
診断
中足骨頭間の底側の痛みで足趾に放散する痛みを伴います。
荷重時やつま先立ちで症状が再現されるかと確認します。
足を両側から締め付けて中足骨頭を寄せる動作で痛みを訴えることがあり、さらにその状態で底側より圧迫する事で痛みが誘発されます。(これはヒールのある狭い靴を履いて歩いた状態を模しています)
時に中足骨頭底側に可動性のある神経腫を触れることがあります。
治療
足趾や深横中足靭帯の柔軟性を取り戻し、可動性を回復する事で前足部への負担を軽減します。
痛みのある足を上にして脚を組んで指で足趾を伸展させるストレッチをしましょう。
次に、膝を伸ばした状態で床に座り、中足骨底側を手、あるいはタオルで把持して引っ張り足底筋膜をストレッチしましょう。
椅子の座り足底にボールを当てながら転がす足底筋膜のストレッチも有効です。
ヒールのある靴や先が細い靴を履かないようにしましょう。
足底板(中足骨頭部の近位にパットを入れて神経の圧迫を軽減します)を作って、前足部の趾神経に圧迫が加わらないように注意します。
趾神経にブロック注射をして神経の炎症を抑える事があります。
外脛骨障害
舟状骨の内側にある過剰骨で約15%の人に存在します。
原因と症状と病態
外脛骨と舟状骨の間で微細な動きがでると疼痛の原因となります。
女性に多く、10~15歳の運動量が増える時期に好発します。扁平足(土踏まずがない)を合併している場合が多くみられます。
治療
急性期のケガが原因であれば、シーネ固定やサポーターを使用します。
アーチサポート付きの足底板(医療保険を使用して自分の足に合わせて作る事が出来ますので医師にご相談ください)が有効な場合があります。
再発を繰り返す場合は外脛骨の摘出や経皮的なドリリング、骨接合術などの手術を行います。
母趾種子骨障害
病態と症状
母趾の付け根の関節の足裏側に2つの種子骨があります。 二分種子骨や関節症、骨壊死、疲労骨折などで痛みを生じるものを含みます。
荷重をより受ける内側の種子骨の方が障害を受けやすくなります。
母趾を蹴りだす動作にて痛みを生じます。 X線(レントゲン)にて分裂像や硬化像、関節症変化が認められます。
治療
種子骨の部分を陥没させた足底板(医療保険を使用し自分の足に合わせて作りますのでご相談ください)を使用すると痛みが軽くなることが期待できます。
痛みが強くて長引くときは、種子骨の摘出の手術を行う場合があります。
股関節に関する疾患
変形性股関節症
症状
はじめは大腿部や臀部に痛みを感じますが進行すると股関節(鼠径部)が痛くなります。
初期は立ち上がりや歩き始めの痛みが中心ですが、進行すると安静時痛を伴ってきます。
痛みを伴うため跛行を呈します(骨盤の外転筋が低下し骨盤を支える力が衰えるため)。
拘縮(関節が固まる)がみられると爪切りや和式トイレ、靴下を履く動作などに支障がみられます。
原因と病態
股関節の軟骨が摩耗して起こります。中年女性に多くみられます。
先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全(生まれつき骨盤の臼蓋という部分が浅くなる)、外傷性の骨折や脱臼、大腿骨頭壊死などが原因で起こることがほとんどです。
急激に悪化・進行することはなく、年齢とともに緩徐に進行する病気です。
診断
股関節の運動時痛と可動域制限が認められます。 X線では関節の裂隙が狭くなります。
進行すると骨が硬化し骨嚢胞、臼蓋の外側に骨棘(骨のトゲ)の形成がみられます。 エコーにて関節の水腫がみられる事があります。
予防と治療
まずは体重を増やさない事が大事です。
次に股関節に過度な負担をかけない事、例えばランニングや登山、テニスなどの負荷のかかる運動は控えましょう。
お勧めの運動は水泳や水中歩行、エアロバイクなどの運動です。(週に2~3回)
痛みを伴う運動は避けてください。
最初は負荷を少なく、短時間の運動から始めて、そこから徐々に負荷や時間を増やしていきましょう。
生活様式では、床の生活は立ち上がりの際に股関節が深く曲がり、荷重がかかるため避けた方が良いと思います。
椅子とテーブルの生活をお勧めします。 杖を使用する事で股関節の負担を減らし炎症を悪化させない効果もありますのでご検討ください。 痛み止めも生活の質を落とさないためには有効な手段です。
変形性股関節症は慢性的な痛みとなりますので、慢性疼痛に効果がある痛み止め(整形外科学会のガイドラインでも推奨されています)もありますので医師に相談してください。
これらの保存療法でも症状が取れない場合は手術療法を考えます。
初期のうちでしたら自分の骨を生かして行う骨切り術の適応ですし、関節の変形がすすんでいる場合は人工股関節手術の適応となります。
単純性股関節炎
症状
症状は股関節痛ですが、大腿(ふともも)の前や膝にかけて痛みを訴える場合もあります。
歩行時に足を引きずる事がありますが、時に歩行困難となります。
原因
小児の股関節痛の中で最も多い病気ですが、原因は不明です。
原因は不明ですが、ほとんどが3~10歳の(平均6~7歳)に発症し男児に多くみられます。
診断
股関節の可動域制限と運動時痛を認めます。 X線(レントゲン)では異常を認めませんが、関節の水腫が強いと大腿骨頭が外側に偏移し、内側の関節裂隙の開大がみられる事があります。 エコーにて関節水腫(関節に水が溜まる)を認めます。
治療
安静にすれば通常は、1週~3週で改善します。安静に出来ないと長引く場合がありますので、走ったりしないように注意しましょう。
症状が強い場合は入院して安静にしたり下肢の牽引を行う場合があります。
熱が出たり、症状が長引く場合は、他の病気が隠れている事がありますので、医師にご相談ください。
股関節唇損傷
股関節唇は股関節の骨盤(屋根の部分)の辺縁に付着している軟骨で、それが損傷する事で発症します。
症状
股関節のひっかかり感、ずれる感じ、しゃがみ込みや床や椅子からの立ち上がりでの痛み、足を組んだ際の痛みなどがあります。
原因
臼蓋形成不全(股関節の屋根の部分が浅くて関節が不安定になる)やFAI(大腿骨頸部や骨盤の形態異常)によって大腿骨と骨盤が衝突し(インピンジメント)軟骨を傷める事で発症します。
診断
股関節を屈曲90度、内転・内旋にする事で痛みが誘発されます。(股関節の屈曲90度、外旋、いわゆるあぐら動作でも痛みが出ます)
股関節に局所麻酔をすることで痛みが軽減すれば本症の可能性が考えられます。 X線(レントゲン)やMRIでも診断します。
治療
保存治療が基本となります。
痛み止めの飲み薬や湿布を使用します。
痛みを誘発する姿勢や動作を避けることが重要です。
理学療法士が行うリハビリでは大腿骨と骨盤が衝突しないように骨盤の動きを引き出す筋トレやストレッチを行う事で痛みが軽減する事が期待できます。
保存的治療でも効果がみられない場合は手術治療となります。
基本的には内視鏡を使用して、関節唇を縫合したり部分切除をしたりします。
臼蓋形成不全を伴っている場合は股関節の骨切り術を行う場合があります。
軟骨のすり減りを伴っている場合は人工股関節置換術を行う事があります。
足関節に関する疾患
変形性足関節症
原因と病態と症状
足関節の軟骨がすり減り足関節が変形する病気です。
足関節は距骨と脛骨がはまり込んで安定した構造をしていますが、関節が小さいため、単位面積あたりの荷重が大きく、捻挫や骨折後、加齢的変化などで変形性関節症に陥ります。
内反型(内側が傷む)と外反型(外が傷む)がありますが、内反型が圧倒的に多くみられます。中年以降の女性に好発します。
足関節の捻挫後に靭帯が緩んで不安定になる(グラグラする)事で発症したり、扁平足から発症する場合があります。
治療
まずは保存治療(手術をしない)を行います。
痛み止めの飲み薬や湿布を適宜使用します。痛みが強い場合は、関節内にステロイドを注射します。
足底板も有効です(医療保険を使用してご自身の足に合わせて作成しますが、傷んでいる場所によって足底板を調整します)
上記の治療で効果がみられない場合は、手術を行います。
下位脛骨の骨切り術(傾いた骨を切ってバランスを良くする)、足関節固定術(脛骨と距骨を骨性に固めます)や人工関節置換術(骨の表面を金具や置き換える)などがあります。
アキレス腱周囲炎
長距離のランニングやダッシュ、ジャンプなどでアキレス腱に負担がかかり炎症を起こす病気です。
運動をしない方でも、腓腹筋~アキレス腱が硬くなったり、靴が合わないなどで痛くなる場合があります。
原因と症状
原因はアキレス腱の変性(加齢的変化)に関連します。
運動はじめや運動後に痛みを生じます。アキレス腱と踵の骨の境界付近に圧痛を認めます。
治療
治療は保存的治療(手術をしない)が中心です。
腓腹筋~アキレス腱のストレッチをしながら、痛みが軽減しない場合は理学療法士によるリハビリを行います。
超音波器具による物理療法も有効です。
踵を少し高くした足底板(医療保険を使用してご自身の足に合わせて作ります)が有効な場合があります。
足関節(足首)捻挫
症状
足関節(足首)捻挫には、 外側の痛みとして前距腓靭帯損傷(一番多い)、踵腓靭帯損傷、二分靭帯損傷、脛腓靭帯損傷、 内側の痛みとして三角靭帯損傷、 足の甲の痛みとしてリスフラン靭帯損傷などがあります。
最も多くみられる前距腓靭帯について説明します。
足関節を内側に捻る事で、足関節外側の靭帯(前距腓靱帯)が損傷します。
外くるぶし(外果)の前や下に痛みがあり、腫れ、圧痛を認めます。
以前、捻挫をした事がある場合(陳旧性)、靭帯の不安定性(足関節のグラグラ)が残存して痛みを出す場合があります。
原因と病態
ジャンプの着地や歩行時で、足を捻って生じます。
捻挫とは、関節に非生理的な負担が生じ、関節を支持している靭帯や関節包が損傷することです。
靭帯の損傷程度によって、捻挫の程度を三つに分類します。
靭帯が伸びる程度の損傷を1度捻挫、靭帯の一部が切れるものを2度捻挫、靭帯が完全に切れるものを3度捻挫となります。
診断
足をひねったという病歴に加えて、外果(外くるぶし)に腫脹と圧痛を認めます。 X線(レントゲン)写真で、骨折の有無を確認します。
エコーにて靭帯の腫脹や連続性(断裂の有無を直接みることが出来ます)、不安定性(グラグラの有無)を確認し診断します。
予防と治療
ケガに対して、下肢の安静(歩きすぎない)、下肢の挙上(可能な限り足を上げる)、アイシング(定期的に氷で冷やす)、適度な圧迫を行います。
捻挫の程度(1度~3度)によって治療が変わってきます。
歩行時の痛みが強い時は(2度~3度)、1~2週の間シーネやギプスにて固定します。
その後、痛みや圧痛が軽減した事を確認後に、サポーターへ切り替えてスポーツ復帰を目指します(まずは歩行から開始し、バランス訓練を行いながら、徐々にランニング、ジャンプなど強度を上げていきます)。
スポーツ復帰を目指す方は、足関節の可動域制限や筋力低下に対してリハビリをお勧めします。
痛みが長引く場合や不安定性が強い場合に、手術をする事があります。
腓骨筋腱脱臼
原因と症状
足関節の背屈時に腓骨筋腱に強い収縮力を生じる事で腱が脱臼する事があります。
多くは脱臼後に整復されていますが、腱鞘(脱臼しないように支えている)が損傷しているため、運動の再開にて再脱臼や痛みを生じる場合があります。
腓骨(足関節近く)の後方に圧痛(押すと痛い)を認めます。
治療
治療は急性期であればシーネやギプスを用いて2~4週間程度固定をします。
その後、サポーターへ変更し、理学療法士によるリハビリをしながら、運動の復帰を目指します。
再脱臼を繰り返すような陳旧例であれば、手術(靭帯が脱臼しないように制動します)を行う場合があります。